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「スーパーの原点」を考える ブログトップ

吉田日出男さんの「風車系主婦の店」運動とは? [「スーパーの原点」を考える]

ボランタリーチェーン「風車系主婦の店」を主宰した吉田日出男さんは、
その著書「スーパーの原点」第一章スーパーマーケットの創始
‘セルフサービスの採用’の項(13~14ページ)に
次のように書いています。

・・引用・・
 単に売上高規模だけで見るならば、
 ダイエー一社の売上高の半分にも及ばない、
 と言われるかもしれないが、
 わたしどもの「主婦の店」は「風車」のマークに示されるような、
 消費者、社員、出資者、取引先の四者を共に利する、
 という考え方で一貫して進んできた。

 よしや、その歩みは遅々としているとしても、
 地域の消費者によりよい商品を、より安く提供したい、
 家庭の主婦のためになる店を作ろう、
 という初心は貫いてきたと確信している。
・・引用終わり・・

「スーパーの原点」第八章 風車の店
‘ダイエー中内氏と私’の項(161ページ)において、
吉田日出男さんは次のように書いています。

・・引用・・
 次のような手紙を中内功さんからいただいた。
 ・・略・・「前略、ありがとうございました。
 ・・略・・十二年前、小生がスーパー業界へ身を投じて以来、
 いろいろ先輩として御教示いただいたことをあつく感謝しております。
 いよいよこの国もスーパーマーケットの時代が開幕されようとしております。
 先生の理想と現実とが一致しようとしていることを肌で感じております。
 主婦の店の社名は時代とともに消え去りましたが、
 創業の精神として末永く忘れない様にしたいと存じます 匆匆
 ・・略・・株式会社主婦の店ダイエー 代表取締役 中内功」
・・引用終わり・・


スーパーの原点 (1982年)

スーパーの原点 (1982年)

  • 作者: 吉田 日出男
  • 出版社/メーカー: 評言社
  • 発売日: 1982/04
  • メディア: -



「主婦の店新聞岐阜加納版第5号」 [「スーパーの原点」を考える]

「主婦の店加納店」(岐阜県岐阜市上本町4)は
昭和33年(1958年)3月26日に
「主婦の店新聞岐阜加納版第5号」を発行しています。

その中に、
~本日より店内擴張・商品充實!!~
と題した記事が載っています。

・・引用・・
主婦の皆様
 常に変わらぬ御愛顧本当に有難うございます
 主婦の店加納店も創業以来六ケ月を迎えましたが
 お陰さまにて売上高も月々漸増し
 売場も狭障を告げる程になりましたことを
 一同心から感謝申上げております
 つきましては皆様の御要望に添って
 此の度店内を拡張整備し

  春の行楽とお祭りに備えて
   天ぷら、カツレツ、コロッケ売場を新設し
   アイスクリームも発売
   其の他の食料品も充実しました

  新学期に備えて
   文房具、学用品売場を新設し
   又運動靴もはじめました

  又日用品売場でも
   陶器と金物を充実し
   硝子製品もはじめました

 そして、特別の記念売出しは致しませんが
  謝恩の気持は品物とお値段で!
  そして 一年三百六十五日が特売日!
 をモットーに毎日が奉仕日、全商品が奉仕品
 の気持でお取次ぎさせていただいております
 どうか装いを新たにした主婦の店加納店へ
 おいで下さいませ
・・引用終わり・・

「主婦の店新聞岐阜版第1号」 [「スーパーの原点」を考える]

昭和32年(1957年)10月9日に
全国第5番目の「主婦の店」として開店した
「主婦の店加納店」(岐阜県岐阜市上本町4)が発行した
「主婦の店新聞岐阜版第1号(昭和32年10月9日)」に
次の記事が掲載されています。

…引用…
 お買物は楽しむ時代です!
 ところが、
  買いたくない品物を無理に買ってしまったり―
  面白いなと思った商品でも、さわったら買わねばならぬかと
  思って見合わせたり―
  雨の中を傘をさして、あちらの肉屋さん、こちらの八百屋さん、
  そして向うの魚屋さんと買いまわったり―。
 というように、奥さま方の日々のお買物にも、
 なやみがつきないようでございます。
   そこで私共は、折角のお買物を楽しんで頂きたいと存じ、
 「主婦の店」を開くことに致しました。

  主婦の店は、お宅のお台所の延長
 でありたいと願っております。
  そこで奥さま方に代わって食料品をはじめ日用必需品をお安く、
 気軽に間に合わせるために、
 「主婦の店」はセルフサービス様式に致しました。
  「主婦の店」には、御案内と商品の補充のため
 僅かな店員がおりますが、販売員はおりません。
 そしてその他の店員は、お値打品、良い品を捜しに
 外部で活躍しております。
  どうか、「主婦の店」の売場の棚は、お宅のお台所の棚と
 思召して誰にも気がねすることなくお好きな品を
 御自由に御自分でお選び下さいませ。
  一度買おうと思って籠にお入れになりました品物でも、
 又自由にもとの棚へお戻しになっても結構です。
  そして最後に出口の御勘定場で、はじめてひとまとめにして
 お代を頂戴致しますから、種々雑多なこまかいお買物に
 いちいち財布を出し入れして頂く必要はございません。
…引用終わり…

「主婦の店加納店」が開店する前の
昭和32年10月6日付の朝日新聞岐阜版には
~「主婦の店」お目見え~
と題した記事が掲載されました。

・・引用・・
 主婦が気楽に日用品を買えると言うことから
 「主婦の店」という名の日用品デパートが
 九日から岐阜市加納新本町で開店する。
 加納地区の酒屋さん八軒が出資してつくった
 協同組合のようなもので、
 他の店と変わっているのは客が買いたいものを
 勝手に店の入口に備えてあるカゴの中に入れ、
 出口で代金を計算してもらうセルフサービスが特徴。
 ・・・略・・・これは米国のスーパーマーケットを
 参考にしたもので、全国では四番目の店だそうだ。
・・引用終わり・・

また、昭和32年10月8日付の毎日新聞岐阜版には
 ~“お安くします” 主婦の店 全国で五番目 あす店開き~
と題した記事が掲載されました。

・・引用・・
 岐阜市加納上本町に“主婦の店”という
 セルフ・サービスのマーケットができ、九日から開店する。
 加納地区の酒屋さん八軒が中心になってつくったものだが、
 日用雑貨から肉、魚、野菜、金物、菓子まで台所のものなら
 何でもそろっている薄利多売主義で市価より
 一割五分から二割安い。セルフ・サービスなので
 店員につきまとわれて無理に買わされる心配がなく、
 気軽に備えつけのカゴにとって勘定場へ渡せばよい
 …などの百貨店に似たサービスぶりを
 掲げているところが特徴。
・・引用終わり・・


基礎からの商業と流通

基礎からの商業と流通

  • 作者: 石川 和男
  • 出版社/メーカー: 中央経済社
  • 発売日: 2007/10
  • メディア: 単行本



「主婦の店新聞大垣版第1号」 [「スーパーの原点」を考える]

「主婦の店」第1号店は、
昭和32年(1957年)5月3日に開店した
「主婦の店大垣店」(岐阜県大垣市林町2丁目)です。

「主婦の店大垣店」が昭和32年5月3日に発行した
「主婦の店新聞大垣版第1号」を見ると、

 ~こんなお店はきらい ―(一主婦の声)― ~

という記事が載っています。

・・・引用・・・
 1.店の前に立ち止まるとスグに「いらっしゃいませ」と云う店
   ― ゆっくり手に取ってみることもできない。
 2.はいりにくい店 ― 少しの品物を買うのにキマリが悪い。
 3.商品に値札がついていない店
   ― 値段が高いか、安いかわからないから。
 4.取替えや返品を気安くしてくれない店。
 5.そのほか買物しても受取証がないので
   家計簿に記帳するとき不便だとか、
   店内が暗くて近代的でなく買物をするたのしみがない、
   店員が無愛想だなどという耳を声に(注:原文通り)します。
 
 こんな消費者の声を解消するために本場アメリカでは
 30年も前からセルフサービスという販売の方式が
 とられていて、食料品店の90パーセントが
 セルフ・サービスなのです。
 日本でもこんなお店が各地に出来つつあり、
 お客様より大変ご好評をいたヾいております。

 セルフ・サービスを採用したスーパーマーケット
 “主婦の店”にご来店の上、お買物をお楽しみ下さいませ。
 ・・・引用終わり・・・


小売商業の近代化―販売革命の動向と本質について (1959年)

小売商業の近代化―販売革命の動向と本質について (1959年)

  • 作者: 鈴木 保良
  • 出版社/メーカー: 中小企業診断協会
  • 発売日: 1959
  • メディア: -



セルフサービスとは? [「スーパーの原点」を考える]

スーパーマーケットで買物をしていて
腹が立つことがあります。

こんなことがありました。

ある大手総合スーパーの乳製品売場でヨーグルトを陳列していた女性に
「〇〇〇ー乳業の赤のたっぷり果実とヨーグルトはないんですか?」と聞いた時、
「〇〇〇ー牛乳?牛乳売場はあちらです」と
牛乳売場を指差しで教えられたことがあります。

また、同じ総合スーパーの食品売場レジで
買い求めた品の代金を精算する時
チェッカー(レジ担当)の女性に
「〇〇〇ー乳業の赤のたっぷり果実とヨーグルトは
今売っていないのですか?」と聞くと、
「売場になかったら、ありません」と答えられたことがあります。

スーパーマーケットで働く人にとって今は、
主婦の店運動と呼ばれ、
日本全国で主婦の店が次々と開店した昭和30年代と比べると、
とても楽な時代だと思います。

どこから仕入れようかと悩むことはあっても、
「仕入ができない。どうすれば買えるのだ」と
悩むバイヤー(仕入担当者)ははまずいないでしょう。

チェッカーは、
野菜・果物でさえ事前パック済みの商品が増えていて
バーコードをスキャンすればいいだけなので、
商品名を覚える必要もないようです。

こんなこともありました。

ある食品スーパーでラ・フランス(2個入りパック・バーコード付)を買い求め、
レジで代金精算をした時に、
新人らしいチェッカーの女性は
バーコードの位置がわからなかったようで;

女性:
「アボガドですね?」

私:
「いや、ラ・フランス。(パックの側面下部を指差し)ここにバーコードがあるよ」

女性:
「すいません」

日本にスーパーマーケットができてから50年以上が経ちました。

技術的な進歩は目覚しく、
未経験者でも十分運営していけるシステムが出来上がっているのが
今のスーパーマーケットのようです。

システム化、マニュアル化が進んで
スーパーマーケットで働く人にとって楽な時代になりましたが、
セルフサービスという販売方式を取り入れた総合食料品店という
サービス業として大切なことを失ってしまったのではないのでしょうか?

セルフサービスという販売方式は
“ノーサービス”ではないはずです。


セルフサービス入門 (1958年)

セルフサービス入門 (1958年)

  • 作者: 長戸 毅
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
  • 発売日: 1958
  • メディア: -



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